佐渡市相川宵乃舞|相川音頭をざっくりと現代語訳してみた

※2022年5月更新

2022年の佐渡市相川宵乃舞は6月3・4日(金・土)の開催です!

詳しくはこちらから!

https://s-nets.info/yoinomai/

 

 


 

 

2021年6月4・5日(金・土)に行われた佐渡市相川宵乃舞の様子と、そこで歌われていた相川音頭についてお届けします!

 

宵乃舞を見てきました!

6月4・5日(金・土)に行われた佐渡市相川宵乃舞を見てきました!

宵乃舞とは佐渡市相川地区の京町通と奉行所で行われる音頭流しです。

音頭流しと言われてもあまりピンとこないと思うので、和風サンバのパレードと言ったらわかりやすいでしょうか。

もちろんパレードのような賑やかさはありませんが、和のしっとりとした舞と歌声、三味線の音色を美しい景色とともに堪能できます。

19時から始まるので日が沈むにつれて辺りががだんだんと暗くなり、通りの両側に並ぶ宵乃舞と書かれたぼんぼりが演者を夕日とともに優しく照らします。

 

佐渡の複数の民謡団体がおけさ笠をかぶり着物を着て

立ち方(たちかた)と言われる提灯を持つ人・踊り手、

地方(じかた)と言われる歌い手・三味線・鼓の順に列を成し、京町通りを奉行所へ向かって踊り・歌い流します。

このおけさ笠をかぶり、顔が見えるか見えないくらいのチラ見せ感がこれまたいい雰囲気を醸し出しています。

 

京町通りはかつて金銀山と奉行所を結ぶメインストリートとして栄え、今でも歴史ある街並みを残し風情ある通りとして佐渡の観光名所の一つとなっています。

古民家を改装したカフェやギャラリー、小さな映画館もあり街散策にはとても良い場所です。

相川音頭

相川音頭は江戸時代から相川で盆踊りの唄として受け継がれてきました。

宵乃舞は20年ほど前に始まった比較的新しいお祭りです。

写真の相川音頭全集の表紙の相川盆踊りの大絵馬を見ると、船の形をした変な被り物をした人やおかめのお面を被った人々が描かれていて、ハロウィンパーティのようなお祭りだったことがうかがえます。

 

宵乃舞を見ていて一つ気になったことがあります。

「一体彼らは何を歌っているんだろう?」。

図書館から借りた「相川音頭全集」を基に、民謡団体に所属している歌い手さんからも話を伺い、

宵乃舞で歌われた相川音頭をざっくりと解説したいと思います。

宵乃舞で歌われている歌は源平軍談 五段目 義経の弓流し

宵乃舞に参加されている民謡団体の皆さんが歌っているのは

「相川音頭」の中の「源平軍談 五段目 義経の弓流し」の一節を歌っています。

ちなみに相川全集に掲載されている相川音頭を数えたら源平軍談を含め全部で39タイトルありました。めちゃくちゃたくさんありますね。

 

ちなみにこの源平軍談は源氏と平家の合戦について語っているもので、佐渡は一切関係ない作品だそうです。(え?佐渡関係ないの??)

ではなぜ佐渡になんのゆかりも無い歌が歌われているかというと、当時は心中物(男女がともに自殺すること)や恋物語の歌が流行っていたそうですが、

奉行所の前で歌うには内容が下世話でよろしく無いということで当時のコンプライアンスに引っかかり、もっと勇ましいカッコイイ歌を歌おう!ということで源平合戦を描写した 源平軍談の五段 義経の弓流しの一節 が歌われるようになったそうです。

※軍談・・・昔の合戦を題材とした娯楽性が強く、大衆に広く迎え入れられている読み物

源平軍談の歌詞

では宵乃舞で歌われていた源平軍談 五段 義経の弓流しの歌詞を見ていきましょう。

どっと笑うて立つ浪風の
荒きおりふし義経公は
いかがしつらん弓取り落とし
しかも引く潮矢よりも早く

 

浪に揺られてはるかに遠き
弓を敵に渡さじものと
駒を浪間にうち入れ給い
泳ぎ泳がせ敵前近く

 

流れ寄る弓取らんとすれば
敵は見るより船さし寄せて
熊手取りのべうちかくるにぞ
すでにあやうく見え給いしに

 

されど熊手を切り払いつつ
ついに浪間の弓取りかえし
もとの汀にあがらせ給う
時に兼房御前に出でて

 

さてもつたなきおん振舞いや
たとえ秘蔵のおん弓にして
千々の黄金をのべたりとても
君の命が千万金に

 

代えらりょうやと涙を流し
申しあぐれば否とよそれは
弓をおしむと思うはおろか
もしや敵に弓取られなば

 

末の世までも義経こそは
不覚者ぞと名を汚さんは
無念至極ぞよしそれ故に
討たれ死なんは運命なりと

 

語り給えば兼房はじめ
諸軍勢みな鎧の袖を
濡らすばかりに感歎しけり
濡らすばかりに感歎しけり

なんとなく訳してみる

上記の文をなんとなく訳してみました。

大きな波が押し寄せる中、義経さんはうっかりと弓を海に落としてしまった。潮の流れはとても早く弓は流されてしまった。
船で迫り来る敵に弓を取られてしまってはまずいので、馬に乗ってその弓を引き上げようとしたけど、
敵に熊手のような武器で取られそうになった。が、ギリギリのところで回収し、元いた場所に戻ってきた。

部下の兼房が「先輩、いくら大事な弓とはいえ馬で海の中に入っていくのは危険すぎます!こちとらヒヤヒヤしましたよ。こんなことで命を落としては恥ですよ。」と言って諌めたところ、
義経が「いや、弓が惜しいんじゃなくて、源氏のボスである私がこんな小さな弓を使っていることが敵に知られてはそれこそ末代までの恥になるから是が非でも取り戻したんだ。」と言い、命も顧みず、源氏の名声を保とうとした義経に部下たちは鎧の袖を濡らすほど涙を流し強く感動しましたとさ。

かなり脚色しましたが、わかりやすい言葉にすると上記のようになると思います。(反論大いに歓迎いたします。)

 

こちらのお話し、勇ましい内容でもあると思いますが、

「義経さん、大事な時になんで弓落とすん?」

「最初から立派な弓使っとけやー」

とか。ツッコミどころも色々ありそうです。

五段 義経の弓流しには前後の歌詞もあるのでしっかり読み込んだら気になる部分が解けるかもしれません。

最後に

宵乃舞を実際に見る前は、「着物を着た人たちが通りを練り歩くだけのお祭りかな?」

と思っていましたが、話を聞くうちに面白さや疑問を抱いたので調べてみました。

歌の内容を理解するとお祭りの印象がまた変わってくる気がします。

江戸時代金銀山での過酷な労働の中での楽しみである音頭を、皆で歌い踊った人々に想いを馳せることができますし、それが現代まで受け継がれお祭りとして存在し、現代人も同じ相川音頭から楽しさを感じていると思うと、違う時代を生きているのに当時の人々と共通点を見つけられた気がして不思議な感覚になります。

 

かなり噛み砕いた感じでお伝えしましたが、宵乃舞・相川音頭・佐渡民謡の面白さがお伝えできたら幸いです。

 

↓宵乃舞を動画でご覧になりたい方はこちらをどうぞ

 

 

参考にさせていただいた相川音頭全集は佐渡市内の図書館で借りることができます。

気になった方は図書館へ足を運んでみてください。
佐渡市立図書館ご利用案内

 

佐渡には後世に残したい伝統芸能・文化がたくさんあります。

佐渡文化財団のページも合わせてご覧ください。
→ https://sado-bunka.or.jp/

 

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。